「煙草…止めてくだ、さい…」

居間でバルドゥルが煙草を吸っていると回が眉間に皺を寄せて見ていた。

「煙草、苦手だったか?」

そう言って口に含んだ煙を回の顔面吹きつける。

「……」




――バキッ!!

「何する、ん…ですか…」

「お前がなんてことしてくれるんだよ」

先ほどまでバルドゥルが座ってた椅子は見事に半壊していた。回の手にはどこから持って来たのか火掻き棒が握られている。 バルドゥルが素早くよけなければどうするつもりだったのか。…どうもしないだろう。むしろやった本人が何してるんですかと言いそうだ。

「それで?お前のその様子じゃ煙が苦手なわけじゃないんだろ」

椅子の破片を集めながら聞く。煙をかけられた時、顔はしかめていたが咽せはしなかった。ということは煙には慣れているんだろう。 煙が嫌なわけじゃない。かと言って人の健康を気遣って言っているとはとても思えない。 回は少し考えたような顔をするとスケッチブックを取り出した。喉を痛めているため長い話になるときは回は紙に書く。 だが書くのは時間がかかる。バルドゥルは半壊した椅子を隅に寄せ、別の椅子に座るとまた煙草をくゆらせながらそれを眺めた。

『以前チーズフォンデュしたじゃないですか』

「…ああ、したな」

まだ仮想世界でゲームに参加してた時の話。どういう経緯でかはそうなったのかは思い出せないがまわるのルームメイト達とチーズフォンデュを食べることになった。 まわるとドミニオン。二人揃えば大人しく食事になるはずもなくいつも通りの口論の末、チーズの投げ合いに発展していた。

『私、特に意識して言った訳ではないんですがあの時チーズかかったあなたを見て「美味しそう」って言ったんですよね。だから本当に美味しいのかな…?と思って』

「俺を食って試す気か…」

頷く回を見て、バルドゥルは慌てもせず煙を吐き出す。やると言ったら回は本気でやる奴だ。 しかし、回は食ってかかろうとはしてこない。今食べる気はないのだろう。

『食べる時、煙草で苦くなってたら嫌じゃないですか』

「薫製みたいでちょうどいいかもしれないぞ」

煙草を灰皿に擦り付けて立ち上がる。

「味見でもしてみるか?」







〜〜〜〜〜

現実世界の冬ップル。回の体が現実世界のドミニオンさんと戦えるほどではないので
バトルはなさそうですが口では色々やり取りしてそうですwそんな妄想。




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