『線路は続くーよ どーこまでも♪』
ガタンゴトンと列車が揺れる。それと一緒にガタンゴトンとライラの体も揺れる。
けれどその揺れに流されないように座席に体を必死に縛り付けて座っていた。
そんなライラをよそに隣に座っているまわるは大層明るい声で歌い続けている。
動いちゃ駄目だ。動いちゃ駄目だ。ライラは体中に冷や汗をかきながら座席の縁を握りしめた。
駅のホーム。第三のゲームに参加するため大勢の人が集まっいる。そこにまわるとライラもいた。
今回のゲームはこの始発駅から始まり、着いた駅でそこにいるもう一組と戦うというものである。
勝った者には帰りの乗車券が与えられ、負けた者はここのステージに取り残されてしまうらしい。
まわるは勝つ自信があるのか、それとも負けても取り残されるという事実に恐怖していないのか、
一組としか戦えないことを残念がっていたものの戦闘は嬉しいのか機嫌は良かった。
それにしても駅は人が多くてごった返している。いつになったら出発できるんだろう。
あと何時間も立ち往生が続きそ…
「おい」
突如背中にかけられた声に振り向く。
そこには前回のゲームで戦った茘枝が立っていた。
「おや…ええっと、この間会った…茘枝さん?じゃないですか」
まわるはわざと相手を苛立たせるようにもったいぶった言い方をする。
それに茘枝はギリッと歯軋りをしたが溜息をつくことで怒りを発散した。睨む目は変わっていないが。
「お前にちょっと話がある…」
二人がいくつか交わしていた会話をライラは横で聞いていたがよくわからなかった。
召喚士がいたと言われている現実世界の話だろうか。ところどころ知らない単語が出てくる。
くるりと茘枝が背を向けた。どうやら話は終わったらしい。
生徒会長の目が行き届いているここで戦うわけには行かないのか震える拳を押さえつけ早々に立ち去ろうとしている。
だが、ふと立ち止まると顔だけこちらに向けた。
「そういえば、お前…恵さんはどうした?」
「?」
まわるは眉間に皺を寄せて首をかしげている。それをさして気にせず茘枝は言葉を続けた。
「お前がこちらにいるということは彼もここにいるのか?…まぁいい。我には関係ないことだ。
今度会ったら問答無用で潰す。この前のようにはいかない。覚悟しておくといい」
そういって、茘枝は召喚獣のところへと戻っていった。
「めぐ…む……?」
ライラがまわるのほうを見ると首をまだかしげている。覚えはないのだろうか。
しかし、それでも何か引っかかるのか何度も先ほど言われた名前を反芻していた。
しばらくしてやっとホームが空いてきた。線路へ降りる人もまばらになり今ならやっと駅を目指せそうだ。
行かないのだろうか?ライラはまわるを覗き込むが表情は髪で隠れており窺えない。
『めぐむ』という名前を反芻することはもうしていないが先ほどからずっと調子だ。
ホームから線路を見下げるばかりで動こうとしない。ライラは溜息を吐いた。
彼が動こうとしないのなら自分は待つしかないのだ。
前を向いた。目の前に広がるのはどこまでも黄金の夕日と砂漠だ。
砂嵐がすごい。砂漠というだけでも足をとられそうなのにこの砂嵐ではだいぶ体力を削られそうだ。
野生のポケモンも出てくるらしいし、まわる自身戦闘を避けることも自分に魔力をなかなか与えてくれそうにもない。
たとえ駅に無事についたとしてもそこでも別の主従との戦闘が待っている。
…大丈夫だろうか。体力には自身はあるつもりだがどうにも今回は不利な気がする。
ライラはもう一度まわるのほうを見た。先ほどと変わりはなく一向に動く気配はなさそうだ…。
そう思っているとまわるの体がぐらりと傾いた。ゆっくりと線路のほうへ倒れていく。
「なっ…!!」
ライラは慌ててまわるの服を掴み、ホームのほうへ引っ張った。
力ずくで引っ張ったので反動でその場に倒れこむ。ライラは尻餅をついた部分を擦りながら体を起き上がらせた。
まわるのほうも地面に座り込んでいる。
「ちょっと、何をしてるの!?」
いくら電車が来ていないとはいえ、結構な高さのあるホームから落ちれば危ない。
思わずライラは肩を掴んで叫んだ。まわるの顔がゆるゆると上げられる。
「ライ…ラ……」
ライラはいつもと違う召喚士の様子に思わず目を見開いた。
搾り出された声はか細く、顔は白い。目だって揺れている。
いつだって自信を持った笑い方をしていたのに…。
どう声をかければいいのかわからずそのまま動けなくなった。
『野をこえ 山こえ 谷こえてー♪』
しばらくそのままホームにへたり込み、顔面蒼白のままいきなり立ち上がったと思えばまわるはずんずんと線路の上を進んで行った。
途中飛び掛ってくる野生のポケモンをゴミを払うかのように剣でなぎ払い立ち止まることはない。
ライラはなんとかサポートをしながら小走りでその後を着いていった。
まわるの容赦ない攻撃はいつもと同じだったが違うのはいつもなら戦闘の際は笑いながら楽しそうに相手を踏みにじって行っているというのに
今回はただ淡々と何の反応もせず物事をこなすだけかのように進んでるということだ。
目的の駅に着き、待っていた他の主従を相手にするときもそうだった。
地面に平伏した相手を見もせず、帰りの乗車券を手にしたことを確認すると早々と電車に乗り込む。
そんな様子にライラは眉を顰めるばかりだった。
そして乗り込んだ電車の中で機嫌は一変して先ほどから明るい声でずっと歌い続けている。
いや、明るいのは声だけだ。ビシビシと重い空気が車内に張り巡らされている。
動いたら殺される。声を出したら殺される。もう気配に気づかれても殺されそうな気がした。
そんな緊張感の中ライラは必死に座席にしがみ付いていた。
電車のほうが歩いてきた行きよりも早く感じるはずなのに長く感じて仕方がない。
早く着け早く着け早く着け。頭の中で何度も念じる。
『はるかな町までぼくたちのー たのしい旅の夢つないでる〜♪』
だけど線路の先に見えるのは沈む夕日ばかりでまだまだ駅にはつきそうにはなかった。
〜〜〜〜〜
歌ってないと電車乗ってるの怖い(笑)
第三回戦、三の黄昏SSを純さん宅のライラさん、ヒスイさん宅の茘枝さんをお借りして書かせていただきました。
皆さんがイベントTLで盛り上がってた中、「じゃあ、まわるは線路は続くよーどこまでもー」って歌わせるか〜。
と言ったところ。まわるさんふざけてるw(怒)と言われたのでじゃあ、シリアスで書いてやるよ(怒)
と勝手に喧嘩買って無理矢理書いたSSです。ハイw結果ちゃんとシリアスになってるのかは知らん←
ヒスイさんにもいただいた始めの駅で幼馴染のことを匂わせてくれるという設定もいただいてしまいまして///
なにそれうめえええええ!駅とか最悪じゃないの!幼馴染が死んだ場所で匂わせてくれるとか最悪じゃないの!
有難うございます!!!!となったのと一緒に書かせていただきました。
ううん…茘枝さんと幼馴染がどこまでの知り合いなのかちゃんと話せていないのですっごい曖昧な感じで書かせていただきましたけど
何か不都合がございましたら遠慮なくいってくださいね!><
きっとこのイベントの後から鬱ってそうですwいや、鬱らせるつもりです。弱らせる。弱らせて…どうしよう?
…まわるに幼馴染のことを吹っ切れさせようと話進める感じで書いてるわけですが、ね。
私、あまり物事考えずその場のノリで書いてますんでどうしたらこの依存症が吹っ切れる展開に持っていけるんでしょう?わかりません^p^
そんな簡単に吹っ切れられない。それほどまわるは幼馴染を大事にしてましたので…。ケッシテワタシノアタマガタリナイカラトカソンナンジャナイヨー。
幼馴染の存在を知る機会は悪夢工房さんで(勝手に)させてもらえたし、思い出す鍵は茘枝さんに貰えるし、
しかし吹っ切れる展開は?もぉおおお頭の中がまわるまわるですぐるぐるですはぐるまです!
ずっとまわり続けてるの嫌だ!ネタよ降りて来いぃいい!とまぁ、愚痴りつつ…今回はここまでで;見てくださって有難うございました!